古本を扱うブックカフェ『火星の庭』を夫婦で営む前野久美子さん。仙台のひとつの空気を形作っていると言っても過言ではないこのお店をスタートして11年。店舗経営の傍らで様々なイベントを精力的に行われている。毎年6月に仙台市内で開催される『Book!Book!Sendai』もこのお店からスタートしたということ。場所を持つこと、人と人との出会い、本に対する想いや可能性を伺った。

仙台駅周辺の都市部と宮城県立美術館や東北大学のある青葉山の間の閑静な住宅街にある、現代美術を専門としたギャラリーTURNAROUND。ギャラリーと共に自ら内装を手掛けたというカフェHUNGAROUNDを併設し、アーティストのみならず、地元の美術好きの集まるスペースになろうとしている。今回はこのTURN&HANGAROUNDを運営する関本欣哉さんに話を伺った。

「小さな街」というブログを中心に仙台のシーンを紡いでいる、小野朋浩さん。
その活動はイベントをはじめ、ワークショップやライブなど多岐に渡る。
「小さな街で起こる小さな出来事を穏やかに紹介します。」という言葉の中にある、仙台への想いや、今後の活動についてお話を伺った。

東北大学の建築・社会環境工学科の本江正茂准教授が校長を務めるせんだいスクール・オブ・デザイン(以下、SSD)では、日々変動する時代を生き抜くタフなクリエイターを育てることを目的に社会人クリエイターと大学院生を対象としたカリキュラムが組まれています。そこではグラフィックや映像など多様な業種のクリエイターと建築系の大学院生が共同でアイデアを出し合いながら、メディアや環境、コミュニケーションをテーマにした課題に取り組んでいます。異分野異世代のクリエイターが集うことで生まれる新しい可能性を体感することで、これからの多様化する社会に対応していかなければいけないクリエイターの基盤を育んでいます。まだ2年目のこの試みは、継続されていることで多様な世代、多様な分野が高め合うプラットフォームとなっていくことが期待されています。今学期は「復興へのリデザイン」と題して、地域再生や仮設都市、情報共有化など震災で見つかった課題をテーマに講師を呼び、さまざまな公開講座を開設しています。こうした活動に加え、仙台クリエイティブ・クラスター・コンソーシアム(以下、SC3)のチーフプロデューサーを行う本江正茂氏より、仙台という街の可能性や震災後の状況などを伺いました。
2007年にクリエイターとの対話を重ねていくことを目的に発足したグループ“logue”は、これまで高木正勝やタナカカツキといったアーティストやクリエイターをインタビューしWebなどで紹介していくとともに、クリエイションに関わるプロフェッショナルな技能を身につけるためのワークショップ“Cultivation”を開設しています。アートディレクターや学芸員、ライター、アーティストといった異色な組み合わせのこのグループは、仙台という都市に身を置いて活動を続けています。そうした彼らのまなざしの先にあるものは何か?その活動やスタンスなどについて、メンバー全員から伺いました。
logueがスタートしたきっかけについて
−logueをスタートしたきっかけはなんですか?
小川 5年ほど前に仙台市の経済施策でクリエイティブ産業の振興というテーマが取りあげられ、そのときに準備委員会が立ち上がったんです。なぜか僕にも声がかかって、ほかにも紹介していったところ何人か入って、鹿野さんもそのうちの1人です。その時に、研究プロジェクトをいくつか作ろうという話になったのですが、クリエイティブな仕事がどんなものかわからないまま進めていくことに違和感があったこともあり、まずはクリエイティブな仕事とはなにかを人に聞きながら考えていくプロジェクトをやってみようということで始まりました。
僕らは他にも仕事をしているので、あまり生真面目に毎日やるという形ではなく、手が空いているときにやるような形でやっていました。インタビューを続けていくうちにワークショップもやってみようかとなり、Cultivationというシリーズを始めています。僕は所属するせんだいメディアテークでもワークショップをやりますが、行政がやるワークショップはどうしても広く一般に開くために初心者向けになったり、高い参加費をとってでも高度なことをやろうとはならないので、本気で仕事に活かそうと思う人向きではないんです。そもそも、MAX/MSPを使うワークショップなんて仙台だとそうないので、交通費分の参加費ぐらいなら出してでも参加したい人がいるだろうという話で始めました。ちなみに、その時に酒井さんも加わってメンバーが5人になります。
ところで、logueという器をつくることでいろいろなところから相談がくるようになりました。もともと「クリエイティブ産業振興」から始まっているし(笑)、そういったものを責任もってやれる形を探していった結果、試しに会社みたいなことができるかどうかと思ってLLC(合同会社)にしてみたんです。メンバーそれぞれの仕事もありつつ、そこからこぼれてくることや物足りないところをどうするかの余地としてのlogueだったし、法律のことなどいろいろ教えてもらいながら、1年ぐらい話し合って決断をしました。会社組織としては、いわゆる社員として菊地さんと鹿野さんが、そして柿崎さん、酒井さん、僕がボードメンバーとして参加している形になっています。兼業の問題がある人はボランタリーなメンバーということですね。ということで、やっと僕らのイメージしている仕事やライフスタイルと、現実社会の仕組みの折り合いをつけて、いろいろやろうかなという時に、地震が起きてしまった。
普通の営みとしてあるクリエイティブ性
−皆さんがlogueを続けるためのモチベーションはどういうところから来ていますか?
菊地 僕はlogueが始まる1年前の2006年の3月に仙台に来たのでもともとゆかりはないんです。普通に会社勤めしていれば会社の付き合いや社員同士で仕事をすると思うのですが、僕はフリーライターなのでlogueなどがあるおかげで1人じゃできないことができるというメリットがあります。
酒井 僕もまだ仙台に来て4年目なので、仙台にゆかりがあるわけじゃないんですね。logueと関わるようになったのは僕が仙台に来て、1年目か2年目の時に柿崎さんに仕事を依頼されてからです。僕はもともとResponsive Environmentというメディアアートグループに参加したりDance and Media Japanという団体でワークショップなどを手伝っていましたが、作品を作ったりする活動の中で学ぶ場所が絶対にないと困るし、そういうのはほぼ東京にしかないので、logueとは別に自分たちの学ぶ場所を作ろうと仙台市に話をしていたところ、同じようなこと考えているのであれば一緒にやらないかという話があったので参加しました。実際に参加してみたら面白かったのでそのまま続けることにしました。
鹿野 僕はこの地域で生まれて、今もここを拠点にいわゆるデザインやクリエイティブといわれる業界で仕事をしています。最初は仙台の市場の中だけで仕事をしていたのですが、より条件の良いプロジェクトを求めて、大きなクライアントや大きい予算のある東京を目指すようになりました。(編注:アートディレクターとして所属しているWOWが)起業してから5、6年で、本社は東京に移ったという経緯もあります。そういう状況のなかで、仙台で仕事を続けていくことを考えたときに、クリエイターは予算があって理解あるクライアントがいなければ、良いものは作れないのか? 自立できない商売なのか? という疑問が湧きました。では、どうやって自立していくかを考えた時に、地域ともっと連動し連携していくことが絶対必要だと思った。その基盤がとても欲しかったんですよね。漠然とした地域の問題など、(特定の)お客さんがいない課題に関して、どうやって我々のような職業に携わるものが、考えて、答えていくか。僕にとってはそれがたまたまlogueという場だったのだと思います。
継続性という話でいくと、僕らは派手なイベントを特別指向していませんし、会うのもたまにという程度です。でも僕はそうしたテンポはすごく重要だと思っています。地域の中で生きていて、その生活がずっと続いて行くことを考えたときに、普通の生活の中の普通の営みとしてクリエイティブ性があっていいと思うんですね。だから家庭菜園で野菜を作るくらいのイメージでも良いのかなと。logueの活動は企業体としてクリエイティブとどう取り組んでいくか、という事とはかなり目的も手法も異なりますが、僕自身はとても勉強になってますし、今後もこうした活動をずっと続けていきたいと思っています。
菊地 なんとなくみんな同じことを考えているっていうのも大きいです。例えば、僕の親父が遊びで漁をやっていたので、自分の将来の生き方を考えたときに半分漁をして半分クリエイティブなことをする「半漁半創」みたいな生き方が年を取ってからできないかなと考えていたんです。生きるためには交換経済のようなかたちでお米を作っている人に魚をあげる代わりにお米をもらうといったことをやって、クリエイティブなことは直接自分が生きるための手段としてではなく続けていけるんじゃないかなっていうのをぼんやり夢想していました。
それをメンバー内で話した時に、世捨て人が何か言ってるよ……みたいなことにはならずに、むしろそういうイメージをなんとなく共有出来ている感じがあるんですね。世捨て人みたいな扱いをされずにそういうことを語ることができる場というのが、意外と世の中にはない気がします。
地域性-与えられた枠組み
鹿野 logueの最初の取り組みは、地域のクリエイティブな仕事をしている人たちに会いに行って、話を聞いて記録するというものでした。当初は仙台らしさや仙台の地域性に基づいたクリエイティブとは何か? といったテーマを漠然と追っていたところがありました。
でも、その活動を進めながら議論を重ねていくうちに、地域性という言葉がとても危ない言葉だと感じるようになりました。実は地域に住む人々の生活は、地域という土地にしばられているわけではなくて、海外にも行くし東京へも頻繁に往復している。だから各人の流動的な生活がたまたま重なりあっている場所が、地域であると考えることもできるのです。地域性という言葉はそうした流動的な流れの中で働く人々を、強制的に1つの枠にはめてしまう危険性があります。
生活自体はもちろん土地に結びついてはいるんですけど、経済から発生してきた地域性という概念にいつの間にかとらわれてしまっている自分たちに気づきました。だからこそ、地域性というより生活圏の中での自分達らしさ、みたいなものを優先した方がいいんじゃないか、というのがLLC(合同会社)化する直前でメンバーの中で生まれた共通認識だと思います。
自分たちが暮らす場所
−仙台らしさや仙台の特徴というものはありますか?
小川 なかなか言葉にはし得ないです。東京、パリ、ニューヨーク、上海のような世界の主要都市だとある程度の傾向はあるかもしれないですけど、これくらいの街だと、都市環境として海と山が近いといったようなことが出てくるだけですよ。それはそれでもちろん大事なことですが。はっきりとした特徴が出てくる可能性があるとしたら、何か強烈な個性のある人が出て、それに引っ張られる動きがさらに続くかどうかですよね。でも、生まれてずっとここにいる人間の感触としては、仙台では少なくともこの何十年はそういう強烈なムーブメントはないんじゃないかな。たとえば、ここ数年だと、東北大学を中心に建築の人が集まっていると言われますが、仙台のなんらかの都市的な特性によってだけ盛り上がったわけではないでしょう。
日本中の他の都市と同じように無意識に東京に影響受けている部分は当然あるでしょうし、仙台は新幹線だと東京へ1時間半で行けるので、いい意味でも悪い意味でも、東京の影響が強い都市と言えるのではないでしょうか。
さっき鹿野さんが言ったように、logueの最初の課題としては、仙台におけるクリエイティブや地域性とは何かというものだったのですが、いざいろいろ考えたり動いたりしてみると、その問いかけ自体が実感に則していないものだと感じてきました。
むしろ、先ほどそれぞれがlogueに関わる理由を話したとおり、自分のポジションや今の社会状況では、できないとあきらめていることに対して別の形を作ってなんらかの糸口をつかめるようにしていきたい、それが自分たちが暮らす場所でのクリエイティブと言えるし、その先に都市の個性があるかなと。
業界も、考え方も違う5人の対話 –それこそが面白い-
−皆さんがこのメンバーでやっていることに非常に意義を感じていると思うのですが、このメンバーでやっていることで得られることを教えて頂けますか?
鹿野 東京のクリエイティブ産業市場は巨大だからこそ、その中で市場を語ることはできると思うんですけど地方の場合はそれほど大きくないと思うんですね。だから僕らにとってクリエイティブ産業というものが特別な意味を持っていないんです。例えば、logueの取材で酒蔵に取材に行ったのですが、いわゆるクリエイティブと呼ばれる枠からはみ出ていて、もっと大きな枠組みで捉えている。それはメンバー全員がそれぞれ別の業界にいて、全然異なった視点から同じようなテーマについて議論しているからだと思います。僕は美術館などで展示することもあるのですが、小川さんは学芸員という逆の立場なので全然考え方が違います。例えば僕らクリエイターは、どうやってプロジェクトを始めるかに興味を持ちますが、彼はどう終わらせるかを考えないとだめだって言うんですね。そうした視点の違いはとても刺激になるんです。
小川 それは、職業的なものじゃなくて、個人的な志向です(笑)
鹿野 そうか、職業的じゃないんですね。そういう考え方は物を作る考え方と、全く正反対のベクトルなのでとても影響を受けています。メンバー全員からそうした刺激を受けています。それは否定し合うということではなく、それぞれが別の意見でありながらも、同じ方向性をもっている考え方ではないか、と感じます。近い職種だとぶつかり合ってしまうこともしばしばあると思いますが、距離感がぐっと離れているので、逆に納得させられる部分が多々あります。だからこのlogueの面白さの1つは、そうした視点の違いを感じられることですね。皆さんはどうか分からないですが。
菊地 僕は色々なシンポジウムやトークイベントに顔を出したり、その記録を読んだりするのですが、結局logueのメンバー同士で話している方が面白いなっていう感覚が常にあるんですよね。ちょっと言い過ぎかもしれませんが、それが割と率直な感想としてあります。そういう、メンバー同士で話すことの延長線上で誰かをフィーチャリングして話すというのがlogueのインタビューなのかもしれないです。そこで外からlogueの中に入ってきた意見を、皆でおもしろがって考えて行くということもある気がしますね。
logueは議論とか討論じゃなくて対話だと常に言っているので、対話を通して自分の考えをまとめていっているところもあります。具体的なエピソードだと、僕が別の仕事でlogueとしての小川さんにインタビューしたことがあるんです。その時の「logueでやっていることとは何ですか?」という質問に対して、「あなたのやってることに対して僕らお金は払えないけど、あなたに話を聞くということは僕らの時間を使ってある種の対価を払っているんだという意志の表示なんです。」というようなことを言われて、その時に自分の中で「ああそういうことをやっていたのか、うちら。」とスパっと納得させられたことがありました(笑)。
個人では解決で来ない物事のためのリソース共有
−対話する相手はどういう基準で決めているんでしょうか?
小川 今まで話を伺っている方は、本当に興味があってお話を聞いてみたいということに尽きます。その人たちにそれぞれが持っているつながりをとおして訪ねていきました。興味のある人に話を聞くというだけなら個人でもできますが、プロジェクトとしてやることで、1対1で話しているのとは違う距離感が生まれたり、文字にすることで整理されること、あと「こういう話聞いてきたよ」とみんなで共有するといったことができてよいのです。
このプロジェクトがあることの意味というか、ひとつ便利だなと思うことで最近のエピソードを話します。避難所の子ども向けのプログラムを行っている方がいて、その中で映画の上映をしたいという話が酒井さんのところにきて、酒井さんのところで機材は調達できたけれど、さて次は中身をどうしようかとなって、ではそのあたりは僕が調べてみようかとなった例があります。だれかが持ちかけられた話について、メンバーに聞いてみると解決策が出てくることが多い。それぞれがそれぞれの領域でいろんな間口を持っているものの、各自の領域の中だけでは解決できない案件を、logueというなかに投げ込んでみると解き方が見えてくるんです。同じ仕事をしているとか、いつも一緒ではないからこそかもしれません。
酒井 プロジェクターなどの機材も用意ができコンテンツも集まり、自分たちで上映をできて子どもたちも喜んでいるという状態になりますよね。
小川 それは別にお金のやり取りが必要なわけではないし、逆にそれによって、われわれも何かプロジェクトやるときに相談もしやすいという意味で交換の仕組みにはなっています。仕事のなかでも、いわゆる正規のギャラをもらう仕事と、そうでない仕事ってたくさんあると思うんです。僕が関わることの多い映画関係だと、それこそ値札が付いているものはあまりなくて、さきほどのような話は、知らない人が頼むとえらい面倒くさいし高くつくということはあります。そういうことは他の業界でもあるでしょうから、もしかしたら、その筋のことはその筋の人に聞け、というのをおおっぴらにやってみているだけなのかもしれません。
いま多くの人が、今までの仕組みは柔軟性がなくてうまく解決できない問題がたくさんあることは知っているので、その仕組みから少しはみ出る実験場がlogueであるようなイメージです。まだ、logueのことだけで食べている人はいませんし(笑)。また、今までだと、自分が所属している組織や文化と違うことをやろうと思うと、そこから出るしかない状況だったと思うんですが、二者択一の他の立ち位置もありえるだろうと。東京だと独立してもやってけると思いますけど、現実的な問題として、仙台くらいだと独立したらそれを維持するエネルギーだけでいっぱいになるでしょうし。
新しい消費活動としての創造的活動
鹿野 自腹を切った瞬間にものすごい気持ちいいことってあるじゃないですか(笑)。いや、それってすごく重要だと思っていて、これはいくらの仕事だからやるって思った瞬間に途端につまんなくなったりします。例えば文章いたり映像を作るときに「5万円でやってください」って言われたときと、「ただでやってください」って言われたときでは、ただのほうが絶対気持ちいいですよ。自腹で作っちゃうみたいな。
それは仕事の対価を給料として得て、その給料で違うことして遊んで満足するということではなくて、自分がやりたいと思っていることで満足を得たいと思った時に、対価を得るときよりも僕はもっと挑戦するんじゃないかと思うんですよね。まあ世捨て人みたいな感じじゃないですか(笑)
小川 おかしいな。もらえるときはもらうけどって言えばいいんじゃないですか(笑)
鹿野 それが全てではないんですけれども、本当に自分がやるべきだと思うことや継続的にやっていきたいことに関しては、そういう経済観念から抜けたところでやるべきだと思っています。実際それをこの5、6年続けていくなかで、すごくやっぱり解放されているし、仕事とはちょっと違うやり方の作品作りやコミュニケーションできるので。logueもそういうことなんです。僕はそれすごく本当に重要なことだと思ってます。
それは、例えば僕はソフトを作って公開することがあるんですけど、フリーでソフトを公開したときの気持ちにすごく似ています。今まで先人たちが作ったものがある上に、新しいものを作って公開して(表現の進歩に役立てて)いくことはすごく心地いいです。だから、そういうクリエイティブのあり方っていうのは、生活の中に何パーセントか残しておくことで作るものが変わってきます。それがないと、自分が100%賛同できないことを仕事としてやった場合に、デザインやクリエイティブというのは、自分の思想とは違った共同幻想を作って世の中に出してしまうということなんですね。発信力があればあるほどその傾向は強くなります。
そういった共同幻想を作り出すことに加担したことに対し、もっと責任を持たなきゃいけない時代が僕は来ると思っています。それはお金をもらったから当然ですっていうことではなくて、もう少し自分が賛同できるものにアプローチするというような生き方を選択するためには、もうちょっと自立していく必要があるし、自腹を切っていく必要があると思いますし、今までの経済観念だけではない価値観のところに少し自分は身をゆだねる必要があると思っています。
僕は地方であればあるほどそういう活動が実はやりやすいんじゃないかなって思っているんですね。ですが、今回の震災で全然自立できてない状態っていうのがあらわになってきているので、それは僕個人の課題としてももっとどうやって自立していくか、自立した状態をコミュニティーとしてどうやって作っていくかっていうことが課題かなと思っているところです。経済活動は経済活動として大事なんですが、一方で自分の思想に基づくクリエイティブな活動があると思っているということなんです。
酒井 僕と鹿野さんは同じように芸術や美術の作品を出すことがあるんですが、僕の場合は仕事としてではなく割と自由な活動をしています。僕は先ほどお話ししたResponsive Environmentというグループをやっていて、完全にアーティストとして活動しているけれど、スタンスとしては趣味、趣味アートですっていうような状況で活動をしています。クライアント仕事みたいに「フィーをあげるからやってくれ」と言われてもフィー分は新しい開発に使うことにしたりしていて、お金どうのこうのではなくてせっかく自分たちが好きなことをやれるんだから好きなことだけをやり切ろうという環境にしています。Cultivationでは参加費を集めていますけど、学ぶのであれば散々学んで帰ってほしいと思っているので、普通の計算からすると成り立たないような経費だったりしています。かと言って、利益がないわけではありません。自分たちも講師の人を呼んでその人のことが知ることができたし、さらに受講した人たちともつながりもできたりする。お金ではない利益を得ているともいえるし、やりたいことやった感があるから、それでいいと思っています。
菊地 こういう話って、源流を登っているような感じがするんですよね。鹿野さん、娯楽が消費することから作ることに変わっていくといい、みたいなこと言っていたじゃないですか。そのことに近いと思うんです。普通に考えたら、僕が原稿で稼いだお金を使って鹿野さんのトークイベントに会費を払っていくような行動が、お金を介さないでこういうかたちでできているわけじゃないですか。
それは確かにお金を介していると経済活動に見えるかもしれないけど、別にやっていることは一緒で、仕事を早く終わらせて空いた時間でlogueのような活動をやるのは、置き換えれば稼いだ金でゲームを買ってプレイしたり、チケット代を払ってライブにいくのとなんら変わんないんです。そういうふうに消費のかたちが変わっていったというのがまず1つ源流を登っている感じ。さらに登ると、じゃあ仕事そのものをそういう風に変えてみようかとなってくると思います。
例えばこのLibHUBも、みなさんがお金と時間のコストをかけて作っているわけですから、出費か消費かというと出費ですよね。でも、作る側からすると消費行動になっていると思うんです。だから、既にそういうことは当たり前に起きているんだと思います。それをさらに登ると、働くスタイル自体もそういう感じでできないかという話になると思うんですね。
小川 なんかみんなで勝手にだらだら話してしまったので、今日お話ししたことの何割かをすごく縮めて言っておくと、ひとつには仕事とお金の話、地方と東京の話、あるいは業界と個人という話をしたつもりです。日本は安定した社会が続いていたので、あるトピックについて決まった枠組みから考えようとすることが定着しています。ただ実際の世の中はもう大変で、いろいろ新しいことやらなきゃいけないって言われつつ10年ぐらいたって、かつ社会に染みついたいろんな制度はなかなかはがれていない。もちろん、自分たちだけで大きなものを変えられるとは思わないんですが、身のまわりの範囲では意外とやればできるものです。たとえば、ライフスタイルに仕事のほうを合わせていくとか。もちろん、お前たちはこういう仕事をしているからできるのであって、そうでなければできないという人もいるでしょうけど、事実としてやってみたらできたことは間違いない。
輝かしいひとつの解答があるとはもはや思えない世代なので、こういうことを声高に言うつもりもやるつもりもないんですが、ただ世の中で言われいてるほどお金100%じゃないし、あるルールが100%だとも思いません。そんなことはきっとみんな薄々分かっていたことでもあるでしょうから、できそうなことは試してみているというくらいです。

小川直人 | Naoto OGAWA
logue・せんだいメディアテーク
1975年宮城県生まれ。東北大学大学院教育学研究科修了後、2000 年よりせんだいメディアテークの準備に関わり、開館後は各種の上映やワークショップなど、映像文化に関わる企画全般を担当する他、書籍や市民メディアなどさまざまな発信に関する実践や支援を行う。なお今年は育児休業中。また、個人ではライブ制作や教育活動に携わるほか、創造的な仕事や生活について考えるプロジェクト、logue(ローグ)に参加。
菊地正宏 | Masahiro KIKUCHI
logue LLC 代表
大船渡生まれ仙台在住のライター/ 編集者。東京での編プロ勤めを経て2006年から仙台で活動。同12月にニュースサイト「仙台経済新聞」開設。クリエイター対話プロジェクト「logue」、県産のプロダクトを紹介する「杜印良品」、クリエイターがつくるタウン情報サイト「仙台デパートメント」などに参加。お仕事ください。
鹿野 護 | Mamoru KANO
WOWアートディレクター
東北芸術工科大学卒。プログラミングとコンピューターグラフィックスを組み合わせた表現に取り組み、コマーシャル映像からソフトウェア開発まで様々な分野のビジュアルデザインを手がける。近年は国内外の美術館にてアートインスタレーションを発表している。ウェブサイト「未来派図画工作」主宰。著書「Quartz Composer Book」。
酒井 聡 | So SAKAI
仙台高等専門学校建築デザイン学科兼担情報デザイン学科助教 博士( 芸術工学)
1979 年 愛知県岡崎市生まれ「建築・音楽・ダンス・映像・デザイン」という様々な領域をクロスオーヴァーするコラボレーションにより、空間表現を行うアートユニット “Responsive Environment” に2003 年より参加し作品発表を行うとともに、「音、振動、光」を題材に個人でも創作研究活動を行っている。
柿崎慎也 | Shinya KAKIZAKI
TRUNK | CREATIVE OFFICE SHARING インキュベーション・マネージャー
Apple、東北大学大学院経済学研究科等を経て現職。その他、logue( ローグ)、FesLab 所属。FesLab では「occur2009」「occur2010」などエレクトロ・ミュージックとヴィジュアル・デザインを中心としたイベントプロデュースも行ってい る。
Text&Photo/山中慎太郎
クリエイターと街を結ぶプロジェクト
仙台駅から4km程の場所にクリエイターのためのシェアオフィス“TRUNK | CREATIVE OFFICE SHARING(以下TRUNK)”はあります。40組前後のクリエイターが在籍し、新しい仙台のクリエイションの拠点になろうとしているこのシェアオフィスは、単なる場所を提供するだけではなく、TRUNKに来た仕事を所属クリエイター同士で作ったチームであたることもしています。ニーズが多様化し仕事が細分化していく時代の中でこうしたスタイルの「場」が持つ可能性は非常に大きいように感じます。“TRUNK”の活動は仙台市の産業振興課が立ち上げた、“仙台クリエイティブ・クラスター・コンソーシアム(以下SC3)”というクリエイティブ産業支援を行うプラットフォームが支えています。SC3では、TRUNK以外にも、様々なプロジェクトを支援し地域住民とクリエイターがつながる新しい街づくりを目指した活動をしています。
今回はTRUNKのインキュベーション・マネージャー柿崎慎也さん、仙台市経済局産業振興課の熊谷和典さん、TRUNKのアシスタントマネージャーでデザイナーの松井健太郎さん、TRUNKの利用者でプロダクトデザイナーの桐原正憲さんから、それらの活動について詳しく伺うとともに3・11以降の状況についてお伺いしました。

仙台における独自のクリエイティブシーンや、震災後の状況とこれからの動向について話し合う「open meeting for Sendai creative」が、6月24日、アート千代田3331で行われた。会場には、せんだいメディアテーク学芸員の小川直人氏、建築家で東北大学准教授の本江正茂氏も招かれ、現場での様々な試行が語られた。
主催したのは、当日のモデレータをつとめた東京都写真美術館学芸員の山峰潤也氏をはじめ、写真家、プロデューサー、デザイナーなど、20代の若手プロジェクトグループ「TOST」(トスト)。
「TOST」の活動は、TOSS(放る)+POST(届ける)というプロジェクトネームの語源のとおり、様々な地域、人、事、物、場所に自分たちを放り、そこで行われた対話を、WEBや冊子、イベントなどの交流にして届けることで、新しい価値観を生み出していくことを目的としている。わずか6人のメンバー達は、それぞれの本職で養った職能をフル活用することで、様々な媒体をつくり、提案を投げかけている。「TOST」のような機動性の高い異職能集団の形は、仙台のクリエイティブシーンを考えるうえでもキーとなる。

CBCNETに6月24日に開催した TOST -open meeting for Sendai creative- のレポートをご掲載頂きました。
ありがとうございます!
仙台クリエイティブ・シーンのいま | TOST -open meeting for Sendai creative-フォトレポート
2011.6. 24(FRI) 19 : 00 - 21: 3 0( 開場は開始15 分前より)
会場 : 3331 Arts Chiyoda 1F コミュニティスペース 〒101-0021 東京都千代田区外神田6 丁目11-14 3331 Arts Chiyoda
入場料 : 500 円(ご来場頂いた方に、TOST 発行の冊子「 TO SC3 FROM TOST 」を差し上げます。)
出演 : 小川直人(logue / せんだいメディアテーク)
本江正茂(建築家 / 東北大学 准教授 / せんだいスクール・オブ・デザイン校長)
モデレーター : 山峰潤也(TOST / 東京都写真美術館)
主催 : TOST - project team -
URL : http://tost-project.org
E-mail : tostproject@gmail.com
協力 : TRUNK-Creative Office Sharing-, 仙台クリエイティブ・クラスター・コンソーシアム
助成 : 企業メセナ協議会 GBFund
東日本大震災復興支援「Arts Action 3331」参加企画 http://action.3331.jp